馬の近況報告ーキミマロ編

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ただいま、キミマロ君のトレーニングに力を入れています。

物見は少なく落ち着いていて、
比較的 覚えも良く
愛嬌ある その姿。

この特性を活かしたい。
密かな野望を燃やしつつ、調教しています。

ですがふと 思いました。
この状況をキミマロ目線で描いたら…?

今日はキミマロになりかわっての近況報告。

書いているうちに楽しくなり、ついつい長くなってしまいました。
おヒマ〜な時にどうぞお読みください。

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拝啓

はじめまして。
私、キミマロと申します。

富里の乗馬クラブで働いております。
年は 21歳。
サラブレッドとクォーターホースのハーフです。

名前は非常に不本意ながら、キミマロという名で呼ばれております。
思い返せば、この名前をつけられた時から
ここでの暮らしに馴染めないものを感じておりました。

命名する時、あろうことか インストラクター達は
笑いながら 名付けたのでございます。

わたくし、名前というものはヒトサマの笑いをとるためのものではないと
かたく信じております。

こちらへ来る前、わたくしには「シュン」という名が
ついておりました。

わたくしの手帳には カタカナで表記されておりましたので
漢字ではどのような文字か分かりませんが、
「シュン」・・・良い響きです。

駿馬の「駿」。
俊敏の「俊」。

そして

人参の「旬」♡。

失礼いたしました。

誤解のないよう、最初に申し上げておきますが
こちらのクラブへ遊びにおいでになる方達については
わたくし、何の不満もございません。

皆さま、わたくしを見て「可愛い〜」と仰います。
心なしか、いただくオヤツの量も 他の同僚達より多めのような…
気がいたします。

同僚達と比べても、わたくしの容貌は
ひときわ目を引くのでありましょう。

堂々と長い胴。
グラマーなヒップ。

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安定感があり、非常に控えめな長さの足。
しっかりとした ボリューム感のある顔。
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自分で言うのも何ですが
美しく生まれつくのは、罪なことでございますね。

それはさておき、
本題に入らせていただきます。

わたくしが問題に感じているのは
最近の担当インストラクターの振る舞いでございます。

どう考えても、まともとは思えないのでございます。

先日などは、私を引いて馬場を歩きながら
何度も転びました。何度も!です。

それも、「ウォー」などと声を発しながら。
とても正気の沙汰とは思えません。

いくら彼女が後肢のみで歩行しているとは言え、
馬の年に直せば、まだ彼女は10歳程度。

平らな馬場でそう度々 コケるなどありえません。

またある時は、Sさんの畑を横切り 雑木林の方へ
連れて行かれました。

わたくしの勤務地は、あくまで馬場であるはずです。
このようなことは 得心いたしかねます。

まだ あります。

先日は、近所にある農家さんの庭先へも
連れて行かれました。

遠く海の向こう、イギリスでは
捨て馬が問題になっていると聞きます。

もしや わたくしも、この齢でそのような憂き目に
合うのではと、心底 肝を冷やしました。

それだけは勘弁願いたいと、
大きくいななき、抗議の声をあげたのでございますが
かのインストラクターは「大丈夫、大丈夫」と笑うばかりで
一向に真面目にとりあう気配もございません。

わたくし 実は先日、はしたなくも
厩舎の壁越しに立ち聞きしてしまったのでございますが
このような一連の奇行を、彼女たちは  したり顔で
「調教」などと呼んでおりました。

もう わたくしの理解を越えております。
このようなわが身の苦境をお伝えすべく、筆をとりました。

敬具

                                                               平成27年4月8日
キミマロ